飛躍

「あれ?あの子あんなプレー出来たっけ?」「いつの間にかめっちゃ上手くなったな!」子供と関わっていると、突然感じる飛躍の瞬間。そんなことは多々あるし、指導者として喜びを感じる瞬間でもある。

もちろんそれは、直前に行った練習や試合が、その飛躍に繋がったわけではない。何日、何ヶ月、何年、もしくは10年以上長い時間をかけて地道に積み上げたものが、何かのきっかけでその飛躍繋がっているのだ。

そのタイミングは誰にもわからない。指導者も、親も、もちろん本人だってわからない。スポーツを始めて短期間で飛躍につながる子もいれば、本当に長い時間かかる子もいる。

そこで大人が忘れてはいけないことは、飛躍まで「時間がかかる子」が「すぐに飛躍できる人」より劣るわけではないということ。最終的に、飛躍まで時間がかかった子が、すぐ飛躍した子を追い越すなんてことは実際によくある。

サッカーで有名な選手で言えば、長谷部誠選手、中村憲剛選手、中澤佑二選手、伊東純也選手も遅咲きとして有名だ。もちろんその過程で並々ならぬ努力を積み上げているのは間違いない。しかし、それまでの過程で本人の努力と同じくらい重要なものがある。それは周りの環境だ。

いくら遅咲きといえど、小、中、高と各年代でベンチにいることが多く、試合経験が少なければその飛躍は訪れない。考えてみれば当たり前のこと。どんなに才能を秘めていても、試合経験がない子に負けるはずがない。

でも今の日本の環境はどうだろうか?

勝つために、試合に出れず、ベンチで燻っている才能がたくさんないだろうか?これから飛躍する子が、そこに行き着くまでに必要な過程を奪われ、すぐに飛躍した子にばかりチャンスが巡ってきていないだろうか?

プロになることを夢見て、高校で強豪校を目指す人は多い。しかし試合に出れずに諦めてしまい、サッカーを辞めてしまう人もまた多い。

知っているだろうか?高校サッカー部からプロになる選手より、大学サッカー部からプロになる選手の方が圧倒的に高い割合でいる。本当に上を目指すなら、高校サッカーで諦めてはいけないのだ。

つまり、これから多くのサッカーファンがテレビで見るであろう全国高校サッカー選手権大会は、決してゴールではない。これから飛躍するための、サッカーを通し人生をより豊かにするための過程でしかないのだ。

プロを目指すなら、いや、そうでないにしても、もっともっと長い目で、サッカーを楽しむことができる環境が子供たちには必要なのではないだろうか?

 

残念ながら、目先の勝利に囚われ、子供一人ひとりの将来を疎かにしてしまっている指導者は非常に多い。どんな子供にも、私たち大人の想像を超えた可能性が秘められているというのに。

指導者は、自分のおかげで、「何人のプロを育てたか」「何回全国大会に導いたか」ではなく、

自分のせいで何人の子供たちの才能を開花させることが出来なかったか」に目を向けなければいけない。

それをいかに減らすかが指導者の腕にかかっている。

よく考えて欲しい。本当にその環境は子供の将来の為になっているだろうか?

かく言う私もまだまだだ。

 

高く高く飛躍するために必要なのは地道だけ。

しかしどんな道でも良いわけではない。一人ひとりに合わせたより良い環境を。