「育成」と「勝利」
育成、育成というが、スポーツ指導における育成のゴールはどこにあるだろうか。
数えきれない程のスポーツチームがある中で、それぞれが様々な目標を掲げていると思う。「全国制覇」「県大会ベスト8」「強豪高校への進学」「プロ選手の排出」等々あるだろう。
では、その目的は何だろう?その目標を達成することで、子供たちのその後の人生にいったいどんな良い影響があるのだろうか?もちろん、中にはその過程で多くの事を学び、人生で成功を収めることのできる人もいるだろう。
でも、そうなれなかった子供たちはどこへ行く?目的はどうあれ、結果に目標を置き、勝つチーム、強いチームを作ることに拘って、そのスポーツが嫌になり、辞めてしまう子はいくらでもいる。それはその子の心の弱さの問題なのか?家庭環境の問題なのか?指導現場は関係ないのか?
スポーツは高校生まで全力で取り組み、最後の大会でどれだけ結果を残せるかにかかっている、と考えているとしか思えない。私はそうは思わない。「生涯に亘りスポーツを楽しむ事のできる人材の育成こそが目指すべきゴール」だと考える。
ここで難しいのが「勝利」と「育成」の両立だ。
子供たちは大人になってからの事を考えながら、目の前の試合に臨んだりしない。多くの子供が何よりも「勝ちたい」と思っているだろう。実際それが正しいし、それで良い。勘違いしてほしくないが、私だっていつも「勝ちたい」と考えている。「勝てなくても良い」とも思うが「負けさせよう」とか、「初めっから勝つもりがない」なんて思いながら試合をさせたことは一度もない。下の学年の子を出そうが、初心者を出そうが、いつだって勝つつもりで私も試合に臨んでいる。ただ、試合に勝つことが最優先事項ではない。
しかし、世の中では、勝ったチームが賞賛され、トロフィーや賞状をもらい、全国大会に出場した日には、地元のヒーローとして扱われる。誰も、その子の成長の過程に金メダルを渡してくれはしない。結果を残さない限りは。
そうなると、子供たちの勝ちたい気持ちは更に増すだろう。大人も大差ないかもしれないが。育成の本来の目的を見失う人は多々いる。もちろん子供たちは悪くない。このシステムができたことは仕方ないにしても、悪いのは世界から学び、このシステムを変えようとしない大人たちだと断言できる。
子供たちは悪くないから、子供たちの「勝ちたい」に見合うトレーニングを提供しなければいけない。しかし、育成のゴールは絶対に見失っては行けない。本当に難しいなと今回の選手権で実感したところだが、「勝利至上主義」と言われるこの日本のスポーツ文化で「育成至上主義」が勝たなければいけない。勝って証明しなければ、本当の育成が浸透しないのだろう。
キックオフしたばかりなのに、すでに0−100で負けてる試合のような気もするけど。
1点ずつ取らないとね。(笑)